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大阪地方裁判所 昭和58年(わ)3848号 判決 1985年1月14日

本店所在地

大阪市淀川区三津屋南三丁目二一番一号

大滋建設株式会社

右代表者代表取締役

徐錫五

国籍

韓国(慶尚南道蔚州郡凡西面泗渕里七-二)

住居

兵庫県西宮市花園町七番七号

会社役員

大原正路こと

徐錫五

一九二八年三月一〇日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官竹下勇夫出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人大滋建設株式会社を罰金二五〇〇万円に、被告人徐錫五を懲役一年六月に各処する。

被告人徐錫五に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人大滋建設株式会社は、大阪市淀川区三津屋南三丁目二一番一号に本店を置き、建売業等を営むもの、被告人徐錫五は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人徐錫五は、同被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一  同被告人会社の昭和五四年一〇月一日から同五五年九月三〇日までの事業年度において、別表一の損益計算書記載のとおり、その所得金額が一四六、三八四、四二三円で、これに対する法人税額が五二、四九五、六〇〇円であるのにかかわらず、売上の一部を除外するほか架空外注費を計上するなどの行為により右所得の一部を秘匿した上、同五五年一二月一日、大阪市淀川区木川東二丁目三番一号所在の東淀川税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が七〇、七四五、五五三円で、これに対する法人税額が二二、二四〇、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税三〇、二五五、六〇〇円を免れ、

第二  同被告人会社の同五五年一〇月一日から同五六年九月三〇日までの事業年度において、別表二の一の損益計算書記載のとおり、その所得金額が一九六、八六九、六四七円、別表二の二の課税土地譲渡利益金計算書記載のとおり、その利益金額が一五〇、五〇四、〇〇〇円で、これに対する法人税額が一〇七、五三九、八〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部及び課税土地譲渡利益を秘匿した上、同五六年一一月三〇日前記東淀川税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が九六、六一六、八四五円で課税土地譲渡利益はなく、これに対する法人税額が三五、三三二、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税七二、二〇七、一〇〇円を免れ、

第三  同被告人会社の同五六年一〇月一日から同五七年九月三〇日までの事業年度において、別表三の一の損益計算書記載のとおり、その所得金額四三、一六八、七一九円、別表三の二の課税土地譲渡利益金計算書記載のとおり、その利益金額が一一〇、六四五、〇〇〇円で、これに対する法人税額が三六、七四四、〇〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正行為により右所得及び課税土地譲渡利益金の各一部を秘匿した上、同五七年一一月三〇日前記東淀川税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三六、一七八、七四五円、課税土地譲渡利益金額が一二、一四六、〇〇〇円で、これに対する法人税額一四、一〇八、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税二二、六三五、六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人徐の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書六通

一  森山道男の検察官に対する供述調書二通

一  若江篤行の検察官に対する供述調書

一  角本三男、森山道男(昭和五八年一月二七日付)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の昭和五八年六月二九日付証明書

一  登記官風見源吉郎作成の登記簿謄本

一  被告人徐作成の昭和五八年六月二一日付証明書(定款)

一  大蔵事務官作成の昭和五八年二月二〇日付(検察官請求番号10)、同年四月三〇日付(11)、同年五月三一日付(12)、同年六月四日付(13)、同月三日付(15)、同月八日付(24)、同月一三日付(25)各査察官調査書

判示第一、第二の事実につき

一  岡嶋道伸の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官作成の昭和五八年三月三一日付(14)、同年五月二六日付(19)各査察官調査書

判示第二、第三の事実につき

一  森山道男(昭和五八年三月二九日付、同年四月二六日付)、若江篤行(同年五月二日付)小堀利一の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の昭和五八年六月一四日付査察官調査書(29)

判示第一の事実につき

一  第二回公判調書中の被告人の供述部分

一  田中茂(昭和五八年八月三日付)坂本シズ子の検察官に対する各供述調査書

一  田中茂、坂本シズ子、田中貢、橋本雅雄の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の昭和五八年三月三一日付(16)、同年四月六日付二通(17、20)、同月一五日付(18)、同年五月一六日付(22)各査察官調査書

一  大蔵事務官作成の昭和五年分法人税確定申告書謄本

判示第二の事実につき

一  森山道男(昭和五八年四月二三日付)、小田正一、青木成章の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の昭和五八年六月一四日付二通(26、27)、同月一〇日付(28)、同月一七日付(59-2)各査察官調査書

一  大蔵事務官作成の昭和五六年分法人税確定申告書謄本

一  押収してある税額試算表一冊(昭和五九年押第七五二号の一)

判示第三の事実につき

一  田中茂の検察官に対する昭和五八年八月九日付供述調書

一  若江篤行(昭和五八年三月二三日付)、山本富子、新井春二(二通)、神田登美雄、武井徳夫の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の昭和五八年五月一六日付(21)、同年六月一六日付(23)各査察官調査書

一  安藤昌弘、森一夫、梁川悦三作成の各確認書

一  大蔵事務官作成の昭和五七年分法人税確定申告書謄本

弁護人は、一、法人所得の土地売上及び土地譲渡利益金中、判示第二の帝国工業株式会社、菊池色素工業株式会社、判示第三の日新精工株式会社に対する各土地売却譲渡について、各土地売買価格を圧縮し、右圧縮相当額を売上除外したことはなく、いずれも右金員相当額は建物工事を受注したその工事前受金として受注したものである旨、二、判示第二の法人所得中、森山道男に対するマンション購入資金貸付金は、森山道男が被告人会社の承諾なく無断で借入れたもので、同人に対する貸付金ではなく、かつ不法行為による貸倒れを認めるべきである旨、主張するので、以下検討する。

一につき、前掲帝国工業の小堀利一、日新精工の神田登美雄の大蔵事務官に対する質問てん末書、被告人会社の経理事務を敢闘していた若江篤行の検察官に対する供述調書、大蔵事務官に対する昭和五八年五月二日付質問てん末書、総務部長をしていた森山道男の検察官に対する各供述調書、大蔵事務官に対する昭和五八年四月二六日付質問てん末書、並びに「税額試算表一冊」中の土地売上金であることを前提にした記載、被告人徐の検察官に対する供述調書、大蔵事務官に対する昭和五八年五月一六日付質問てん末書の各証拠は、契約締結に至る経過、その売買代金決定額、代金支払方法等の諸事実につき、それぞれ符合しており、いずれも信用性に欠ける点はないものと認められる。右各証拠を総合すれば、いずれも被告人会社において土地売買代金額を圧縮したものと認められる。ところで証人田中は、右各契約締結の最終金額決定に立ち会っておらないことは明らかであり、同証人の証言は未だ右認定に反しない。被告人徐の弁護人主張にそう当公判廷における供述記載部分は、前記各証拠並びにその後菊池色素、日新精工などの闇の建物工事が着工されていないことなどに照らすと、にわかに措信できない。

二につき、前掲森山道男の大蔵事務官に対する昭和五八年四月二三日付質問てん末書、被告人徐の大蔵事務官に対する昭和五八年五月一六日質問てん末書、被告人徐の当公判廷における供述記載によれば、被告人徐は前記森山道男に対しそのマンション購入資金の一部立替を依頼され、これに応じて被告人会社の小切手を貸し渡したこと、他方右金員が村上組に対する外注費として記帳されたことは明らかである。そして右各証拠によれば、森山は引続き昭和五八年五月まで被告人会社に勤務していたこと、被告人会社は森山退社後同人のマンションの引渡を受けその債権の回収に努めたことが認められる。右認定事実によれば、右森山に対するマンション購入資金貸付金は、村上組に対する外注費ではなく、森山に対する住宅資金の貸付金でありかつ右貸付金がいわゆる貸倒れにあたらないこと、これに伴い森山に対する簿外貸付金に対する利息が生ずることが認められる。

従って、弁護人主張は、いずれも採用できない。

(法令の適用)

被告人徐錫五の判示第一の所為は、行為時において、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては、改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、右は改正後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二、第三の各所為は、いずれも改正後の法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、同被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。被告人徐錫五の判示第一ないし第三の各所為は、被告人大滋建設株式会社の業務に関してなされたものであるから、同被告人会社については、判示第一の所為につき、右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当し、情状により同条二項を適用し、判示第二、第三の各所為につき、改正後の法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当し、情状により同条二項を各適用し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で、同被告人会社を罰金二五〇〇万円に処する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 柴田秀樹)

別表 一

修正損益計算書

自 昭和54年10月1日

至 昭和55年9月30日

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

税額計算表(昭和55年分)

<省略>

別表二の一

修正損益計算書

自 昭和55年10月1日

至 昭和56年9月30日

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別表二の二

課税土地の譲渡等に係る譲渡利益金

<省略>

税額計算表(昭和56年分)

<省略>

別表三の一

修正損益計算書

自 昭和56年10月1日

至 昭和57年9月30日

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別表三の二

課税土地の譲渡等に係る譲渡利益金

<省略>

税額計算表(昭和57年分)

<省略>

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